コラム『松本すみこのシニアライフ』 No.27

 

復活するか、学生下宿

2017年6月28日

 
 

異世代ホームシェアに注目!

フジテレビに出演したときに、台本にはもうひとつ紹介するはずの内容があったのですが、時間の関係で割愛せざるを得ませんでした。そこで、今回のコラムで取り上げてみたいと思います。

それは、高齢者の自宅にある空き部屋を、学生が間借りする「異世代ホームシェア」。これも、友達近居とともに、最近、注目を浴びている暮らし方のひとつです。

シニア世代は持ち家の人が多いのですが、子供たちが独立し、配偶者も亡くなると、大きな家を持て余してしまいます。しかも、一人暮らしは寂しく、不安。そこで、地方から出てきた学生に、自宅の空き部屋を貸すという方法です。

一方、地方から出てきている学生は、自宅通学の学生とは違い、住居費、食費、光熱費など月々の生活費が余分にかかります。親も仕送りが大変。不足分はアルバイトで稼ぐにしても、学業がおろそかになりがちです。

そこで、空き部屋のあるシニアの家の一室を借りて住めば、家賃は比較的安く済み、光熱費なども削減でき、大家さんが何かと気遣ってくれるので、親も安心できるということになります。

もっとも「安心」に関しては、恩恵を受ける度合いが大きいのはシニア世代のほう。そばに若い人がいれば、ちょっとしたことは頼めるし、万一の場合も心強い。食事やお茶などもたまには一緒して、若い人との会話も楽しめます。友達近居は同世代の仲間や友人とのつながりで暮らしていくのですが、こちらは若い世代とつながりです。刺激的な部分も多いでしょう。

「異世代ホームシェア」は、どちらかが一方的に恩恵を受けるのではなく、シニアが若い世代にサポートしてもらいながら、逆に、若い世代をシニアがサポートするという、まさに世代間相互扶助の仕組みといえるのです。

町おこし策としても有効

この仕組みを展開している市民団体があります。ひとつは東京都文京区で活動しているNPO法人「街ing本郷」。『ひとつ屋根の下プロジェクト』という名称で、主に、近くにある東大の学生と一人暮らしのお年寄りのホームシェアを推進しています。学生に向けては『本郷書生生活』と呼び掛けています。

理事長の長谷川大さんは、地元の商店街の関係者。このプロジェクトは街の活性化策でもあるのです。2015年の報告会でお会いした時、長谷川さんは、このプロジェクトで、空き家対策、高齢者対策、若者支援、地域の担い手不測の解消を目指したいと話されていました。

また、2012年から、この活動を推進しているNPO法人リブ&リブ代表理事の石橋^子(ふさこ)さんのお話では、活動は1999年にスペインでスタートし、その後、猛暑で多くの独居シニアが亡くなったパリでも展開され、欧米では、多くの学生と高齢者がこの仕組みを活用しているそうです。

最近のニュースにも、東京都練馬区での学生と高齢者の実例が紹介されていましたし、福井県では、福井大の住環境計画研究室と県社会福祉協議会が共同で実施しているという情報もあります。「異世代ホームシェア」への関心は高まっているようです。

学生下宿は普通の時代があった

しかし、よく考えてみれば、昔は学生が一般家庭や高齢者の家に下宿するのは普通のこと。小説の中には、普通に書生さんが登場していました。私の学生時代も、早稲田近辺に下宿して大学に通っている学生はまだたくさんいました。それが、バブルの時代を経て、いつの間にか、ほとんど消滅してしまいました。

高齢者に関していえば、昔は地域のつながりが密で、ご近所との交流もあり、一人暮らしになっても、元気であれば、それほど寂しくなく暮らしていくことは可能でした。しかし、地域コミュニティが崩れ、住居の多くはマンションになり、地域の人々の絆が薄れてしまいました。

地域社会で昔のように密な人間関係の中で暮らしていくことができれば、友達近居は必要なかったかもしれません。また、経済停滞に伴う学生とその親世代の経済事業が変化しなければ、異世代ホームシェアの需要もなかったのではないかという気もします。

今、異世代ホームシェアへの関心が高いということは、昔のような学生下宿も復活しつつあるということなのでしょうか。

神田明神の近くに建ったマンションを格安で学生に貸す代りに、祭りや町内会のイベントに参加することが条件という取り組みが話題になったこともあります。家や住宅の問題は、現代の人々の暮らしそのものを映し出す鏡になっているようです。

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