セミナー受講者はこう変化した!

 

コラム『松本すみこのシニアライフ』 No.36

2018年4月13日

 
 

セカンドライフ・セミナーに関わるようになって15年以上になりました。
この間、受講者層はずいぶん変化してきたな、というと思うことがあります。そこで、その変化を第1期〜第4期として分析し、これからの在り方についても触れてみました。

第1期(2002〜2007年あたり):本命無関心時代

自治体などの要請を受けて、私がセカンドライフ・セミナーに関わり始めたのは2002年ごろ。参加者の多くが主に、専業主婦らしき女性または70代後半から前の男性でした。

主婦の方々は子育てが終わり、何かしたいという意識があるものの、何をしたらいいか、できることは何かを探している雰囲気。

いっぽう、男性は何かを探すというよりは、自分をアピールするためも。自分は年齢の割にはいかに元気で頑張っているかの大演説をぶつ80代の受講者も珍しくはありませんでした。また、失礼ながら、無料講座に参加して時間つぶしをしているように見える方もいました。

この時代、主催者が受講してほしかったのは団塊の世代。自治体では、早くから2007年に定年を迎えて地域社会に戻ってくる団塊の世代に注目していました。団塊という名称がつくほどの大きな集団が自治体への運営に大きな影響を与えることは間違いありません。

仕事が終わった彼らには収入がなくなるので、その分の税収が減ります。なのに、家に閉じこもりがちで健康を害したら、医療費や社会保障費のほうは増えてしまいます。

であれば、定年前の早いうちから、地域社会に活動の場、役割、いきがいなどを見つけて元気に暮らすための意識づけをしたい。また、せっかくの知恵と経験を地域社会に活かしてほしい。そのための方法やきっかけづくりの場を提供しよう。それは定年前から始めたほうがいい。こうして企画されたのがセカンドライフ・セミナーでした。

しかし、ふたを開けてみると、団塊世代の受講者はほとんどいませんでした。無理もありません。2007年はまだ先のこと、「会社命」「仕事命」でまだまだ元気に働いている50代の団塊世代には、定年はピンとこないし、考えたくもないことだったからです。

こうして、主催者と受講者の意識がかみ合わない時代が続きます。それでも、自治体などはあきらめずに講座を開催し、2007年が近づくにつれて、セミナーを実施する自治体も増えていきました。

第2期(2007〜2010年あたり):団塊世代お出まし時代

正直言って、第1期あたりの受講者数は多いものではありませんでした。しかし、定年退職が始まると、彼らは今まで上の空だったセカンドライフについて考えざるを得ない状況になります。

定年後1・2年は再雇用という形で、相変わらず働くことを選択したものの、待遇や給与、何よりもやりがいの点で想像していた状況とは異なり、満足できずに辞める人が増えました。

なにしろ2007年が来たのです。すべての推測が現実として明らかになります。各地で講座が頻繁に開催され、団塊世代の受講者も増えていきました。

ちなみに、奥さんに勧められてという人も少なくありませんでした。夫の在宅が家庭の問題としても浮上したのです。夫も否応なしに、動く必要がありました。

圧倒的に女性の受講者が多かったセミナーも、男性受講者が上回ることは珍しくなくなり、私が担当した講座では9割が男性ということも何度かありました。いよいよお尻に火が付いたという感じだったのでしょう。

熱心な自治体は、2006年から2010年あたりまでの5年間を「団塊世代のため地域回帰推進事業」と位置づけ、定期的にセカンドライフ・セミナーを企画・実施しました。この時が団塊世代を対象にした自治体主催のセカンドライフ・セミナーの全盛期といえます。

第3期(2010〜2016年あたり):ポスト団塊に移行時代

団塊世代のためのセカンドライフ・セミナーが2010年に5年計画を終えると、プランの見直しやターゲット層の修正を余儀なくされます。「団塊世代と呼ばれる大きな集団はすべて定年を迎え、講座の一応の役割は終わった。今後は次の世代の退職者を対象にする必要があるのではないか」という発想です。

そこで、ある自治体はリタイア世代だけでなく、現役年代を対象とした地域デビュー講座に切り替えました。50代はもちろん、地域に関心のある人なら、誰でも受講可とし、プログラムやカリキュラムに新しい企画を取り入れました。

しかし、結果は散々でした。どんなに新しいプログラムにしても、結局、申し込んでくるのは今までと同じリタイア世代。50代は一人か二人いればよし、40代に至っては・・・という状況でした。しかも、ターゲット層を広げた結果、目的があいまいとなり、受講者数は逆に減ってしまったのです。

自治体が第1期に犯した間違いを、この第3期でまたしても行うことになったのです。つまり、現役世代は仕事に夢中で忙しくて、定年後のことなんか考えてないし、考えたくもないということを学ばなかったのです。現役時代にアプローチするには、まったく別の訴求方法が必要だったといえます。

いっぽうで、考えなければならないのは、なぜ現役世代を対象にした地域デビュー講座に、相変わらずリタイアした世代が多かったのかということです。つまり、2010年頃はまだ模索中のリタイア世代が多いということに気付くべきでした。

人間はすぐには変われないし、すぐにやりたいことは見つかりません。5年計画はあまりに杓子定規な期間設定だったということではないでしょうか。じっくりとフォローする仕組みが必要だったのです。

第4期(2016年〜):学習対象はシニア時代

あるセカンドライフ・セミナーの講師を担当した時のこと、会場の雰囲気が例年と違うことに気がつきました。現役世代の受講者が多く、中には30代の人もいるというのです。聞けば、ビジネス効果を期待して受講する人が増えたからとのこと。

つまり、比較的裕福なシニア世代は今やマーケットの主役。そのシニアに向けて、商品やサービスを提供したいと考える人たちが、シニア世代の状況や特徴を学んで、ビジネスに活かしたいと受講するというのです。

この講座、決してマーケティング講座ではありません。主にリタイアした世代を対象に、自分たちの生き方を学ぶための講座として始まったものです。会場には、そうした旧来の目的を持って参加したシニア世代と、その彼らの動向を知りたい若い世代が入り交じり、なかなか得難い体験となりました。

このような状況でも、現役世代は仕事に夢中で忙しいし、セカンドライフ・セミナーなんかには関心がないことには変わりありません。ビジネス派の受講者は自分のことと考えて受講しているわけではなく、あくまでもビジネスメリットを求めてです。

敢えて、こうした講座を選ぶのは、マーケットセミナーなどのデータ分析解説とは異なり、リアルなシニア世代の声が聴けるというメリットがあるからでしょう。

年齢制限をしないセカンドライフ・セミナーでは、今後、こうした状況が増えるかもしれません。主催者の意図とはずれてしまいますが、シニアをきちんと理解して、よりよい商品やサービスが登場するなら、悪いことばかりではないと考えることもできます。

余談ですが、普段からマーケットはシニア世代を正しく捉えてないと思っている私は、「あなた方が思っているシニア世代と現実のシニア世代はかなり違うよ」と、思わず、力説する場面もありました。

生きがいとお金の両立指南も

リアルなシニア世代を知りたいという気持ちは、何もビジネス派の人だけとは限りません。会員資格は50歳以上と定義したわがNPOにも40代の男性が入会してきました。

入会の理由を聞いたところ、「自分たちが高齢者になる頃はもっと大変だと思うので、今から準備をしておきたい。ついては、今のシニア世代の人たちが何を考え、どう生きているかを知りたい」というのです。

このあまりに堅実な考えに、私はびっくりしてしまいました。高度成長期に育った団塊世代やその前の世代は、現役時代の、しかも、40代頃に、自分の第二の人生に思いを馳せた人はあまりいないのではないでしょうか

。貯金もないままに結婚したとか、お金はすべて女房に任せてあるとか、武勇伝のように語る人は知っていますが、若いうちから第二の人生の用意をして動いたという男性は、私の周りの同世代にはほとんどいません。いたとしても、呆れられていたかも。

時代は大きく変わったのです。若い人はしっかりしていて頼もしいなと思う反面、なにかかわいそうな気もするのは私だけでしょうか。

話が少しそれました。今後、セカンドライフ・セミナーは、若い世代の考え方や傾向ももつかんだ上で企画することが不可欠だと思います。その時に重要なのは、今までの多くの講座が行ってきた趣味やボランティアなどの善意活動の部分だけにとどまってはだめだということ。すでに団塊世代ですら、第二の人生でもうひと働きする人たちが増えています。生きがいとお金、この両面を備えた講座内容でなければ、もはやセカンドライフ・セミナーも、地域デビュー講座も成り立たない時代となるでしょう。

自治体ももちろん発想を変える必要があるのです。

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