ホテルに住むというライフスタイル

 

コラム『松本すみこのシニアライフ』 No.37

2018年5月20日

 
 

シェアリングサービスが拡大中

ものを所有しない、持てるものを分け合う時代の象徴であるシェアリングサービスが広がりを見せています。

街を走るシェアサイクル(自転車)、駐車場はもとよりウーバーなどの車そのもののシェア、AirB&Bなどの民宿、シェアハウス、ファッション、そして、人の特技や能力のシェアまであります。まだ問題は多いようですが、新しいシェアリングサービスは今後も続々と登場することでしょう。

シニア世代にはまだ利用するのをためらう人が多いようですが、考えてみれば、私たちのNPOはよくレンタル会議室を利用しています。むしろ、節約したい、持ち物を増やしたくないというシニアにとって都合のいい活用法といえるのではないでしょうか。

さて、家を民宿にする方法はすでにあります。では、その逆、「ホテルを家にする」という考え方はどうでしょう。間違いなくシェアリングサービスです。

淀川長治さんのホテル生活

亡くなった映画評論家の淀川長治さんはホテル1室を自宅にしていたという話を聞いたことがあります。

ウィッキペディアによれば、淀川さんは体調を崩したのをきっかけに、1987年から亡くなるまで、仕事場に近い赤坂アークヒルズ内にある東京全日空ホテルのスイートルームで暮らしていたとか。広い部屋の中は、映画に関する書籍や資料で埋め尽くされていたそうです。

自分にとって大切なもの(本や資料)には場所を確保し、その他は必要最低限にするという淀川さんの生き方、羨ましいと思います。スイートルームのキッチンではお湯くらいは湧かせたでしょうし、食事は外食を活用してどうにでもなります。

外に出たくない日はルームサービスを頼むことができ、洗濯はホテルのランドリーに依頼できます。お部屋の掃除、タオルやシーツの交換をしてもらえ、礼金も敷金も不要。なんて快適!

昨今は、元気なうちに自宅を整理して移り住むシニアマンションがありますが、私は淀川スタイルのほうに関心大。仕事がある人はこちらのほうが使い勝手がいいかも。ただし、お金持ちでないと無理ですね。

米国では「ホテルを家にす」が始まった

と思っていたら、最近、アメリカで「ホテルを家に」するサービスが生まれたという新聞記事を目にしました。しかも、お金持ちだけでなくても利用できそうな料金で。

日経新聞によれば、それはサンフランシスコで始まった「エニープレイス」。始めたのは日本人です! 投資家から資金を集め、順調に業績を伸ばしているそうです。

特長は1か月単位で契約ができ、長く滞在すれば安くなる方式。例えば、1か月の費用は普通に滞在する場合の1/3、15・6万円という具合。ルームクリーニングは週に1度、ホテルによってはWifiが備わり、朝食付きもあるそうです。

利用者は引っ越しや長期出張などが3割、新しいライフスタイルとしての利用が7割と、「ホテルを自宅にする」人が断然多くなっています。

どうする、日本!

では、この方式、日本ではどうなのでしょうか。ラグビーや東京オリンピックでの国際大会を控えて、日本ではホテル不足が常態化。黙っていてもお客さんが来るので、今のところ、ホテル関係者はあまり関心を持たないでしょう。

では、シニア世代は?まだホテルを家にするほどの便利さに気づいている人は少なく、ホテル住まいに抵抗感を持つ人が多数のような気がします。我が家があるのに、なんで、ホテルに?と。

ただ、もっと先の将来を見た時はどうでしょうか。ラグビーも東京オリンピックもいずれ終わります。その後の客足の減速は否めません。

その時部屋を埋めるために、ホテルはどうするか。ホテルを自宅にという発想はあながち的外れな手段ではないと思うのです。

また、今は持ち家に夫婦で暮らすシニア世代が当たりまえですが、今後は、ひとり暮らしが増えます。生涯独身者だけでなく、配偶者に先立たれる人も増えます。ひとり暮らしになっての掃除や洗濯、食事などの日常生活は予想外に負担なもの。

男性だけでなく、女性も同じです。夫婦二人の時は掃除も食事作りもきちんとこなしていたのに夫がいなくなったとたんにやる気が失せて、掃除も炊事も手抜きという人も少なくありません。ホテルを家にという方式は、案外、そうした女性にも適しているではないかと思われます。

ただし、高齢者だけが利用することになれば、老人ホームの代わりかと敬遠されるでしょう。ホテル暮らしはアクティブシニアのものかもしれません。認知症や介護状態になったら、それなりの施設に入る仕組みを作ることも大事かもですね。

ホテルの良さは、年代を問わずに利用者を集めることができること。そのメリットを最大に生かして、短期でも長期でも多世代が利用するコミュニティのような存在になれば、面白いと思います。もちろん、ホテルは人を選らび、人もホテルを選ぶでしょう。

最後に、淀川さんのホテル選びでシニア世代に役立つポイントをご紹介。それは「棺桶がちゃんと入るかどうか、エレベータの大きさを調べて決めた」でした。

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